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「悼む人」天童荒太 ☆☆☆☆

 死者を悼む、しかもまったくの見ず知らずの死者を地方紙などから探し出し、その死亡現場で悼む行為を続けながら旅をする男の物語である。この小説の構成はかなり凝っている。まずプロローグで「悼む人」の簡略が紹介されるが、読み進むとそれがある週刊誌の契約記者のサイトに寄せられたメールだとわかる。また本章の見出しは、目撃者・保護者・随伴者・偽善者・代弁者・傍観者・捜索者・介護者・理解者というように、すべて「者」がつ漢字三文字で記され、かつそれぞれの章が、この主人公の行為を奇異に感じて調べ始める記者、余命いくばくもない主人公の母、殺人の刑期を終えて主人公に随行する女性という三者が各章ごとに交互に二度、視点を変えて登場し、三者の心情の変化が綿々とつづられている。そしてエピローグは主人公の母の死で終わる。以上のように、きわめて考えられたプロットによって構成されている。
 だがその内容については疑問に感じる記述が少なくなかった。もっとも共感しにくかったのが、主人公が死者を悼む旅に出るきっかけである。著者はそれについて親族の死や仕事上のあれこれを、いろいろ記述していたようだが(よく思い出せないので、あいまいに書く)、それが読者である私には心に響かなかったので、最後まで違和感を拭えなかった。また悼むのは事件や事故などの「不慮の死」であって、病死は除外される。そのため、主人公は何年も前の死者を探し出し、そしてその死亡現場で悼む行為を続ける。前半は主人公の行為を疎ましく思う記述が集中するが、後半ではその悼む行為に感謝や共感を示す周囲の反応も書かれている。
 しかし主人公を知り、また殺されかけて「真人間」になる記者の変身が空々しく、また随行する女性に殺した夫の霊が取り付いて語らせるという手法が煩わしく、それに主人公の母が死を迎えようというのに主人公を著者が実家へ向かわせなかったのはなぜかという疑問を感じた。
 以上、なかなか読ませる箇所も多く、また宗教色を排して「死」をモチーフとして小説をまとめあげた著者の志と手腕は驚嘆するばかりだが、「いま一つ何かが足りない」という思いを、読中も読後も感じた作品である。

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