RSS

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
トラックバック
トラックバック送信先 :
コメント
71:承認待ちコメント by on 2010/07/03 at 22:19:15

このコメントは管理者の承認待ちです

▼このエントリーにコメントを残す

   

「鉄の骨」池井戸潤 ☆☆

 池井戸氏の作品を読むのは、「空飛ぶタイヤ」に続いて2作目である。「空飛ぶタイヤ」が面白かったので、この作品もかなり期待して読んだが、正直がっかりだった。話が古い、何年前の話を書いてるんだというのが、偽らざる感想である。それに資料調べがかなり甘い。私は建設業界の人間ではないが、入札や談合についてはそこそこ調べた経験があるだけに、失望を覚えずにはいられなかった。
 具体的に列記すれば、まず電子入札ではなく、S区役所の道路工事(二十数億円で落札)も、都庁交通局の地下鉄工事(千五百七十億円で落札)も「紙入札」で行われる点である。いまどき紙入札はほとんど行われないと聞く。それを入札者が入札室に一同に会する紙入札にしたのは、ドラマ性を出すためかどうかはわからない。しかし作者はS区役所が「ケチ」だから、あるいは交通局は「理由はわからないが」と弁解じみたことを書いているが、小説の演出を重視したための「作家都合」だとしか思えなかった。
 しかも道路工事の入札は指名競争入札である。指名競争入札は発注者である役人を利するばかりだから、一般競争入札にほとんど切り替わっているのに、その現状を作者は知ってか知らずか、指名競争入札のまま、ストーリーを進める作者の手法に疑問を感じた。
 それから地下鉄工事に主人公の所属する一松組(東証一部上場の準大手という設定)が単独入札を行う点も疑問である。スーパーゼネコン(鹿島・清水・大林・大成)が小説では名称は異なるが、JVを組むのに、準大手の一松組が単独で入札しようとしても、経審(けいしん・経営事項審査の略)の評価点で、まず入札申請は受理されないだろう。また一松組はこの地下鉄工事を獲るために銀行に融資を依頼するという設定も、経審の評価対象とされるので、この単独入札はますます不可能である。
 また予定価格の漏洩は電子入札なら考えられず、また予定価格が公表される(入札後がまだ多いが)ことや、ダンピング防止のための最低入札制限価格が設けられ(事前に公表する自治体が増えている)、さらに最低価格入札者自動落札制度から価格以外も審査の対象とする総合評価落札方式への移行が国の主導で進んでいるなど、入札制度は激変しているのに、作者の書く「オハナシ」はカビの生えた昔の話なので、失望するばかりだった。
 さらに地下鉄から手を引く条件として、来年の瀬戸内海の四本目の架橋工事を一松組は打診されるが、公共工事が大幅に削減されるなかで、こんな「絵空事」はたとえ小説といえ、「アリ」なのかと疑問に感じた。瀬戸内海架橋は岡山-香川ルートの1本だけでも充分なのに、それを隣県の兵庫-徳島(鳴門大橋)、広島-愛媛(しまなみ海道)までが、「オレの県」にも橋を作ってくれと陳情し、利権を求めた政治家とゼネコンが無駄に3ルートも作ってしまったと私は認識している。それなのに4本目はどこに作ると作者は言いたいのか、具体的に作者はどことも書いていなかったが、これはおそらくそこまで考えて書いたのではなく、ただの「思いつき」で書いたためであろう。
 また一松組は地下鉄工事に伝統があるという設定だが、それにしては道路や架橋にも入札するという設定はいかがであろうか。「餅は餅屋」というように、どのゼネコンにも得手不得手はあるはずだ。それをゼネコンだからといって、何でも入札させるのは、作者の勉強不足を露呈しているだけのように感じた。
 以上、かなり辛辣な意見を述べたが、小説としてはかなり面白く書けている。恋人との心のすれ違いなどは面白く読める。ただラストがあまりに予定調和なので想像がつく点や、主人公が「談合は必要悪である」という組織の論理に染まってしまい、たいして苦悩せずに働く点や、公務員が天下りを確保するための官製談合ではなく、大物代議士の裏金作りのための談合として書いた点など、不満な箇所も多いので、あまりお勧めはできない。

スポンサーサイト
トラックバック
トラックバック送信先 :
コメント
71:承認待ちコメント by on 2010/07/03 at 22:19:15

このコメントは管理者の承認待ちです

▼このエントリーにコメントを残す

   
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。