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「松林図屏風」萩耿介 ☆☆☆☆

 安土桃山時代の画家、長谷川等伯について書いた小説である。物語は本能寺の変から始まる。
 私は史実を平均台のようにとらえ、その上で演技する体操のような歴史小説が好きなのだが、本作品はまさにその願いどおりだった。それに何といっても表現・文章がうまい。文体は淡々としているが、それでいてところどころが実に熱いのは、うなるばかりだった。
 作品は等伯と等伯の息子である久蔵、それに中流貴族である入江義晴の三人の視点で語られるが、等伯の狩野派への思い、久蔵と入江の妻である璃枝との道ならぬ恋(表現は古いが、不倫と表現するより的確に思える)、義晴の秀吉への思いなど、読ませどころが多い。
 また、久蔵は祥雲寺の桜襖絵を完成させて病没するのだが、秀吉が等伯へ褒美を取らせようと「で何がほしい。おぬしはいらずとも、おぬしのかかは欲しがるじゃろ。おかかがいらねば子はどうじゃ。おい、何人おる」(中略、秀吉は久蔵の死を知る)「であれば、この寺は鶴松(夭逝した秀吉の嫡男)だけのもではないな。その方の息子、久蔵とやらのためでもある。よし、きょうの法要は久蔵にも捧げるぞ」と、羽織を脱いで、等伯へ投げ与える場面は、権力に弱くて秀吉好きの私にはたまらなかった。
 ただ千利休の切腹を謎とし、諸説を羅列しただけで済ませた点や、「松林図屏風」を朝鮮に降った(この降った理由も説得性に欠ける)義晴の求めで描くなど、疑問に感じる箇所も少なくないのが、残念である。
 ところで本作品は日経小説大賞の受賞作である。なかなか受賞作を読んでも、「これは文句なしの受賞だ」と感じることはめったにないのだが、本作品は「文句なし」のレベルだとうならずにはいられなかった。作者の萩氏は48歳、通信社に勤めている。本作品がデビュー作にあたるが、要注目の作家がまた一人現れたというのが実感である。
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