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「月に響く笛 耐震偽装」藤田東吾 ☆☆☆☆

 2005年の末から2006年にかけて世間を騒がせた「耐震強度偽装事件」の一当事者であるイーホームズの元社長藤田東吾氏の著作である。
 まずこの著作を読み、わずか三、四年前のことなのに、ずいぶん昔の話のような錯覚を感じた。それはこの事件以降も、ライブドア・村上ファンド・あるいはあまたの食品偽装と、数々の事件が起こり、マスコミがこの耐震偽装事件をすっかり取り上げなくなったせいかもしれない。
 まずこの事件だが、姉歯元一級建築士の構造計算書偽造に端を発する。そのせいか、Wikipediaには構造計算書偽造問題という名で項目が立てられている(新聞・テレビでは耐震強度偽造あるいは耐震強度偽装事件と呼んでいたように記憶する)。しかもWikipediaではなぜかA建築士と書かれ、藤田東吾氏もヒューザーの元社長小島進氏も氏名を明らかにしていない。これはイーホームズもヒューザーもいずれも倒産し、また小島氏がいま塀の中にいることへの配慮なのだろうか。よくわからないが。
 さて、この著作は講談社より出されているが、まず「文藝春秋」への恨み節で始まる。これは文藝春秋から出版を予定していたが、ホテルアパグループの耐震偽装に関する原稿を削除しないと、出版は無理だと、文藝春秋が「日和った」ことによる。
 以下、構造計算書偽造を民間確認検査機関であるイーホームズが発見し、それを国土交通省へ報告するか否かでの、小島元社長との見解の相違や、国土交通省の対応、さらには国会での証人喚問など、読ませどころに満ちている。メールの送受信なども、資料として読んで面白い。
 しかし藤田氏は耐震偽装事件ではなく、公正証書原本不実記載というまるで立小便のような軽犯罪で逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受けるが、これこそまさに「国策捜査」の典型であろう。藤田氏を黙らせるために逮捕し、起訴したとしか考えられない。それほど藤田氏の舌鋒は国土交通省やマスコミ(特に読売新聞と日本TVに対して)鋭い。氏の主張を要約すれば、この事件の本当の責任は国にあり、いま発覚している偽装事件は氷山の一角に過ぎない、である。
 氏の発言がきわめて体制側にとっては危険であったことは、この著作を読めば、十分に伺える。しかし難を言えば、もっぱら藤田氏の主観に基づいて、かなり「熱く」語られている箇所が多く、また「関西の翁」という謎の人物や、駐日中国大使王毅閣下(藤田氏による尊称をそのまま書く)や、賢人などの登場が、この事件を客観的に語ろうという氏の思いを横道にそらせてしまったように思える。新幹線の車中で野中広務自民党元幹事長と名刺交換したことを嬉々として書くことにも、何の意味があるのかと、疑問を禁じえない。それに匿名で登場する人名がみな変なので、これはおそらく「わかる人にはすぐわかる」ことを意図したものだろうが、かなり奇異に感じた。よってお勧め度は☆4つである。
 最後に、そんなに遠くない将来に関東大震災か東海大地震が必ず起こると、私は思っている。その際に、もし耐震偽装を告発されたマンションやホテルが無事で、そうじゃないビルが破損したら、この耐震偽装事件に関わった人々は何を思うのだろうか、そんなことを考えさせられた。


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