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「大地の咆哮」杉本信行 ☆☆

 著者の杉本氏はチャイナスク-ル組のキャリア外交官として、北京とフランス大使館で一等書記官、台湾交流協会総務部長、北京大使館公使、上海総領事館総領事などを歴任した。中国に留学経験もあるバリバリの中国通外交官である。だが上海総領事在任中にガンに侵され、帰国後に他界した。
 この著は余命いくばくもないと悟った著者がいわば「遺書」として、自らの体験と見解を語ったものである。その内容は円借款やODA供与、草の根交流など、著者だから書きえた内容も少なくない。また、日本国首脳は靖国神社参拝をやめてはならない、中国共産党が反日デモを抑止しないのは中国共産党の過去の誤りから民衆の目をそらせるためだなど、かなり共感を覚える箇所も少なくなかった。それに中国の戸籍や水問題などへの苦言は、著者の現代中国に対する危機認識の深さを感じさせた。
 しかしである。この著書は天安門事件について、まるでなかったことのように振舞う中国政府に遠慮してか、何も言及されず、ただ日本政府が天安門事件で苦境に陥った中国へ最初に援助の手を差し伸べたと書いてあるだけである。
 それはまだいい。この著作のあとがきに、「本書を、上海で自らの命を絶った同僚の冥福を祈るために奉げる」と書きながら、2004年に起きた上海総領事館員自殺事件の概要については何も記述がない。著者はこの事件に対して、日本大使館を通じて中国外交部へどのような抗議を行ったのか、外務省がなぜ弱腰に処理したかを、どうして書かなかったのか。墓場まで持って行くことを著者は選んだのであろうが、ならば自殺した館員から自分に宛てた遺書を受け取った著者が、事件にいっさい触れずして著作を出版することに何の意義があるのか、それでどうして「本書を奉げる」と言えるのかと、疑問を禁じえなかった。第二、第三の犠牲者を出さないために、著者にこの事件で知り得たすべてのことを語ってほしかったと思うのは、私だけではないだろう。

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